








ウシヲカフムラ 佐藤忠良 画 吉田一穂 編
ウシヲ カフ ムラ
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ウシヲ アラツテ、バウヤハ セナカ。
カアサン、コレカラ クサカリニ。
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ミズヲ ノンダラ、マキバヘ イカウ。
クサノ ニホイガ、フイテ クル。
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ツカヒニ イツタ、トナリムラ。
ウシガ タンボヲ、スイテ ヰタ。
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ヒバリノ アガル、ムギバタケ。
ハナサク ノハラデ、ウシガ ナク。
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コヱタ メウシハ、オチチガ イツパイ。
シボレバ、アツタカク テニ カカル。
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アツ、カアサンダ、ウシ ヒイテ。
サラサラ ポプラノ ユフヒカゲ。
関連絵本 「ウミヘ」佐藤忠良 画
牧歌
新しい日本文化の黎明期に際して、次代の國運を荷負ふ子らのための、良き繪本をつくるといふ、創造的な仕事の欣びは、また我等自らに課した劇しい試練でもある。
明るく、強く、張りのある、しかも優しい、裕かな精神で充された、生々した児童の未来像を想ひ浮かべながら、我々は子供の心理的・肉體的成長の諸段階に副ふて、その年齢度の公準を措定し、子らが欲求し、或は感受し、逆にまた與ふべきものの對象と適應性を檢討し、分析し、實驗して、それぞれに應ずる繪本の製作を企て、こヽに第一期計劃の一部を發表することとなつた。
この繪本では幼年期の一過程に於けるものに對する正確な認識、物像の直截單純な表現、この二面の然かも同意義的な感覺形態としての客體を、美しく快い繪本として、その造型的物量感、その形態の明確性、及び色彩感を、如何に具體的に發想すべきかに就て考慮した。
そして我々は子供の身邊生活に親しい觸目の事象から、家畜としての牛を取材して、殖産的なしかも野外に働く生活の楽しい牧歌調に於て、このウシヲカフムラを制作したのである。
これを描くに當つて物の量、線と面、凸凹や塊について、造型的な獨自の観察と表現法に特質ある彫刻家を撰んで依嘱した點に、我々の意圖を察せられたい。
おそらくこの作家はコドモ・ヱホンを描く意を決した時、その幼年時代をすごしたふるさとの自然を背景に、牛の諸形態を構想したであらう。
純粋な作家にあつては、童畫といへども、その藝術衝動の根源は同一であり、制作慾も藝術觀も、何等その間に差のあるわけではない。
のみならず子供はより自然であり、我々の精神の均衡はつねに自然を志向するからである。
この繪本が世界的水準を抜く香り高い表現をかち得た秘密は、彼れのノスタルヂァを描いたといふ點にあるのではなからうか。
この繪本に多少、異國情景の感じを與へるものありとすれば、その背景となつた土地は、五月に春と夏が一時に來つて、秋の早い、殆ど半歳を白雪に蔽はれる、新しい處女地であり、封建時代の影のさヽない、大農生産様式と、荒地を拓きに行つた爽かな開拓者精神によつて、豊かなみのりを、その立體的な空のもとに展げてゐる土地であることのゆえを想起して、この畫面に匂ふてゐる牧歌的な生産と勞動のよろこびをも、子らに與へる良き惠みとして分ちたい。
カナヰ・ヱホン研究室
吉田一穂
