皇太子殿下北海道行啓・明治44年 ②
(皇太子殿下北海道行啓・明治44年 ①より続く)
九月一日
午前練兵場前に於て、各小學校兒童男女約七百人の聯合運動を台觀。
夫より聽立上川中學校に成らせられ、學校長小林滿三郎以下職員生徒奉迎、校長の御先導にて御座所に入り、御寫眞を賜ひ、長官より學校要覧等を奉呈し、校長及び奏任待遇教諭に謁を賜ひ、第三學年の終身・第四學年の英語・第五學年の漢文の教授及び生徒成績品を台覽、同校より生徒成績品七點を献納したり。
尋で聽立上川高等女學校に成らせられ、學校長明石孫太郎以下職員生徒奉迎。
校長の御先導にて御座所に入り、御寫眞を賜ひ、長官より學校要覧等を奉呈し、校長及び奏任待遇教諭に謁ン一郎を賜ひ、第四學年の遊戲・補習科の國語・第三學年の歴史の教授及び生徒成績品を台覽、同校より生徒成績品七點を献納したり。
夫より神谷酒精合資會社に成らせられ、御座所にて酒精の原料・製品・殘滓等を台覽。
社長神谷傳兵衛、會社の状況を言上し、酒精應用製品陳列場・原料上昇室・原料蒸煮及び糖化機・醪酵室・酒母培養室蒸餾室等を御巡覽あらせられたり。
同日午前十一時四十分旭川驛御發、神楽岡假停車場に御着。
御徒歩にて坂路を登らせられ、丘上の御座所に入り、帝室林野管理局札幌支聽長田町與三郎より、支聽管内御料地の概要及び上川御料地の状況を言上。
御晝餐後、御徒歩にて丘を降り、御乘車あらせられたり。
斯て御召列車は徐行して午後二時四十分旭川驛御着、御馬車にて御歸館あらせられたり。
夕刻御旅館前庭に於て、舊土人男女約九十人、熊祭を行ひ、餘興として綱引及び相撲を演じたり。
御晩餐の際、少將内藤新一郎・歩兵大佐小池安之・同白井二郎・三等獣醫正青山鑛太郎・砲兵中佐坂部正恒・騎兵少佐浮田家雄・輜重兵少佐松浦乙一郎等に御陪食仰付けられたり。
夜上川中學校生徒約四百人・旭川在郷軍人約千人、提灯行列を爲し、御旅館前に至り萬歳を三唱したり。
此日大内東宮武官を旭川衛戍病院に差遣はされたり。
尚ほ旭川町其他へ、左の如く御下賜の御沙汰ありたり。
(小文字記載省略)
(皇太子殿下北海道行啓・明治44年③へ続く)