映画「ビルマの竪琴」1956 ②

映画「ビルマの竪琴」1956 パンフレット①
映画「ビルマの竪琴」1956 パンフレット①
映画「ビルマの竪琴」1956 パンフレット②
映画「ビルマの竪琴」1956 パンフレット②

映画「ビルマの竪琴」1956 ②

 

(映画パンフレットより)

★ 解説 ★
これは戦後初のベストセラーとして、数多くの読者に親しまれた原作の同名小説の映画化で、終戦前後のビルマを舞台に人間味あふれる物語を抒情豊かな名篇としている。


スタッフは、製作を高木雅行が担当、竹山道雄の原作にコンビ和田夏十の名シナリオを得て、「こヽろ」の鬼才市川崑が快心のメガフォンを握り、撮影横山実、美術松山崇、録音神谷正和、照明藤林甲、吉田協佐編集辻井正則、音楽伊福部昭といった一流のスタッフが腕を競っている。


キャストは、主役水島上等兵に新人安井昌二が丸坊主で出演しているほか、三国連太郎、伊藤雄之助、小笠原章二郞、北林谷栄のベテランが顔を揃えている。詩情溢れる国際色豊かな名篇である。

★ キャスト ★
隊長 三国連太郎、伊東軍曹 浜村 純、水島上等兵 安井昌二、小林一等兵 内藤武敏、馬場一等兵 西村 晃、牧一等兵 春日俊二、高木一等兵 中原啓七、岡田上等兵 土方 弘、中村上等兵 花村信輝、川上一等兵 千代京二、大山一等兵 青木富夫、橋本一等兵 伊藤寿章、清水一等兵 小柴 隆、永井一等兵 宮原徳平、松田一等兵 加藤義郎、阿部上等兵 峰三平、三角山守備隊隊長 三橋達也、兵隊一 深江章喜、兵隊二 成瀬昌彦、兵隊三 天野創治郎、兵隊四 小笠原章二郎、兵隊五 森塚敏、脱走兵 佐野浅夫、ビルマの老僧侶 中村栄二、物売りの婆さん 、その亭主 沢村国太郎、村落の村長 伊藤雄之助。

★ 撮影余話 ★
竪琴の名人、水島上等兵が帰国を断念してのち、はからずも作業中の戦友友達の歌声を耳にして、竪琴をかなでる感動シーン。ここでビルマ最大で、且つ世界的に有名なペグーの大臥像が銀幕に登場する。
ペグーはラングーンを東に百キロの地で、釈迦の大往生の姿をかたちどったもので、この映画のそれと違い、横を向き、眼をつむっている。容貌も、更に大陸的であるそうだが、この映画で、殊更に変えてあるのは、物語の臥像が架空の場所であることを意味しているのである。
 ★
では、この幻想味豊かな物語、この架空の場所――。これを意地悪く、裏がえして覗き見してみると、この臥像の台座は材木を骨にシックイ作り、臥像そのものは竹を骨にしたハリボテである。尤も、長さ十間、高さ四間、顔の長さ、二間半という、嘗ての「大佛開眼」より巨大で、ツクリモノでは日本一の大きさである。こうなると製作費も安くない、百五十万円、足の裏だけで十万円かかっている。何しろ臥像の出入り口はここにあって、ここでは芝居があるので、タイルでモザイク模樣や指紋まで作られている。延べ三百五十人の労力が、半ヶ月かかって完成されたもの。
 ★
このハリボテ臥像を見た人々の声を紙上録音してみたら――。
閑院宮別邸に遊びに来た或る中国人――
「どうしても五十年前のものだ、急造のものとは信じられない」
スタッフの一人を乗せた運転手――
「あんな処に、大きなお不動様があるとは知らなかったねエ」
小田原市民――
「壊すのは勿体ないから、是非、小田原名物にして欲しい」
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熱帯植物やバナナの木が見えるが、実は、みな植木鉢に植えられたまま、何しろ場所が場所だから、バナナなどある筈はないのである。その場所とは――小田原競輪場の上、閑院宮別邸の雑木林なのだから・・・・・。