パパ、おはなしして・佐藤忠良 絵

パパ、おはなしして・佐藤忠良 絵
パパ、おはなしして・佐藤忠良 絵
パパ、おはなしして・目次
パパ、おはなしして・目次
「さあ、もうおやすみ」 パパ、おはなしして・佐藤忠良 絵
「さあ、もうおやすみ」 パパ、おはなしして・佐藤忠良 絵

 

『パパ、おはなしして』(世界の幼年どうわ)
 マーミン・シビリアーク 作
 西郷竹彦 訳
 佐藤忠良 絵
  (株)偕成社 発行(1967年7月 初版)

* はじめに
 アリョーヌシカちゃんは、ロシアうまれの女に子です。
小さいとき、ママにしなれた、ひとりぼっちの きのどくな子です。
 でも、やさしいパパが、さびしいひとりむすめをなぐさめ、よろこばせてあげようと おもい、よるになると、まくらもとで、いろいろな おはなしを かたってきかせました。
 パパというのは、ロシアのゆうめいな作家のマーミン・シビリアークのことです。
 さあ、みなさんも、アリョーヌシカちゃんや あつまってきた どうぶつたちといっしょに、パパのおはなしを、たのしく ききましょう。
  さいごう たけひこ


※    もくじ


さあ、おはなしを はじめましょう・・・・・・10
うさぎが おおかみをおっかけた(というはなし)・・・・・・12
くまが かに おっぱらわれた(というはなし)・・・・・・22
 1 むま地の じゃまもの
 2 ブンブンブン、ブンブンブン
 3 あいてにするやつじゃない!
からすが カナリアとくらした(というはなし)・・・・・・42
 1 にげだした カナリア
 2 野のとりと かごのとり
 3 こいつは、とりじゃねえ
ミルクと おかゆが けんかした(というはなし)・・・・・・73
 1 けんか、ぶつぶつ
 2 あまったれの ねこ
 3 ねこの ちゅうさい
はえが一ぴき いきのこった(というはなし)・・・・・・89
 1 おひとよしの にんげんたち
 2 へっていく なかま
 3 たった一 ぴき
さあ、もう、おやすみ・・・・・・126
「パパ、おはなしして」について(解説)・・・・・・128

 

《解説》 「パパ、おはなしして」について 西郷竹彦

 この本は、ロシアも作家マーミン・シビリアークの「アリョーヌシカのおとぎばなし」の中から、すぐれおもしろいおはなしを五つ、えらんでまとめたものです。
 マーミン・シビリアークは、一八五二年、ウラルの山のまずしい家にうまれました。
家には、工場ではたらく人たちがしょちゅうきていて、にぎやかで、シビリアーク、この人たちの口から、ウラルの山にのこるいいつたえや、むかしばなしをきくのが、とてもたのしみだったといいます。
大きくなって、シビリアークは、そのふるさとのウラルをぶたいにした物語を、いくつもかきあげました。
  シビリアークは、児童文学の作家ではありませんが、おかあさんをはやくなくした、かわいそうなひとりむすめのアリョーヌシカのために、いろいろなおはなしをつくって、かたってきかせました。
 ソビエト文学の父といわれるゴーリキーは、このおはなしをきいて、ソビエトの子どもたちのために、ぜひ本にしてだすようにとすすめました。
この本はこうして世の中にひろくしられるようになりました。
 シビリアークは、じぶんでも、この本をとてもだいじにしていて、つぎのようにかたっています。
「これは、わたしのいちばんすきな本です。ほかのものがのこらなくても、これだけは、のこるでしょう。」

  シビリアークは、一九一二年になくなりましたが、この本だけは、そのあとも、くりかえし、絵本となって、ソビエトの時代になったいまでも、子どもたちをよろこばせています。
ソビエトの子どもで、シビリアークの名をしらぬものはないでしょう。
だれもが、小さいとき、パパやママにこの本をよんでもらったことがあるからです。
いいえ、学校にあがってからも、国語の本でならうからです。
  シビリアークのおはなしには、あかるいわらいがあります。
この本の「うさぎとおおかみ」のはなしや「くまとか」のはなしなど、おもわず、ふきだしてしまいますね。
よんでいると、さびしいアリョーヌシカに、心からわらってもらいたいという、父おやの心が、わたしたちにまで、しみじみ、つたわってきます。
 でも、シビリアークは、世の中は、いつでもあかるい、わらいにあふれたものではないことや、いい人たちばかりではないこと、また、生きていくということのきびしさを、じぶんのむすめにかたってきかせました。
 「からすとカナリア」のはなしや「はえ」のはなしをはじめとして、シビリアークの作品は、みな、人間について、人間の生きるということについて、ふかくかんがえさせてくれます。
これは、むすめにおくる、父おやとしてのきびしい愛のことばなのでしょう。
 わたしも、わたしの子どもたちのために、いや日本の子どもたちみんなのために、この本をおくりものにしようとおもいます。

筆者紹介

原作者 シビリアーク
1853年生れ、1912年没の、ソビエトの文学者。
ウラルの民話をもとにした小説を多く書き、この「パパ、おはなしして」は教科書にもなって、広く親しまれている。

訳者 西郷竹彦
1920年鹿児島県生れ。東京大学応用物理学科卒業。日本児童文学者協会理事。
ソビエトで文学・教育学を研究。翻訳や文学教育の著訳書多し。

画家 佐藤忠良
1912年北海道生れ。
:この本にはこう書かれているが、本来は宮城県生まれで、北海道夕張で育つ。)
東京美術学校(現芸大)彫刻家卒業。新制作協会会員。東京造形大学教授。
彫刻では受賞作多く、絵本・挿絵でも活躍。