「おばあさんとくろうし」ジャータカえほん
出版 財団法人 鈴木学術財団
え 武井武雄
ぶん 宮口しづえ
この絵本の裏表紙には次のように書いてあります。
監修者
財団法人鈴木学術財団文化委員 文学博士 干潟龍祥
「おばあさんとくろうし」について
これはやさしいおばあさんに育てられた黒牛の恩返しの物語です。
恩を返す話はどこでもいつ聞いても心あたたまる思いをさそいますが、このまっ黒い毛並みのやさしい眼をした牛にはみんなを驚かせるほどの力があって、河を渡れないで困っている重い荷物を全部、独力で渡してあげました。
それはこの牛が実は重い荷物を他のものにかわって運んであげるというみ仏の願いのあらわれであったからです。
「南伝大蔵経第二九黒牛本生」には次の偈があります。
いかなる泥深き路における重き荷も
黒牛に結びつなげば
彼はそれをしも運ぶ。
私たちが人生の中で運ぶ荷にはさまざまありますが、その中には大へん重くてほとんど自分だけでは運べないものもあります。
助け合い、力を合わせて私たちはそれを運んでいくわけですが、それも人間の力の及ばない時に至ってはどうすることも出来ません。
私たちのために願いを立ててみ仏が運ばれる荷はその重さ、量からいって、み仏の他には運べるものはいないといえるでしょう。
黒い牛の力はみ仏のこの願いと力とをあらわしていると考えられると思います。