ぼくたちの家出・佐藤忠良 絵

ぼくたちの家出・佐藤忠良 表紙(本・箱)
ぼくたちの家出・佐藤忠良 表紙(本・箱)
ぼくたちの家出・佐藤忠良 絵
ぼくたちの家出・佐藤忠良 絵

ぼくたちの家出

●森でくらそうとした男の子と子犬の話
「ぼくたちの家出」
ウイリアム=コズロフ 作
内田莉莎子・訳
佐藤忠良・絵

「はじめに」として下記のように書かれています。


アリョーシャは、おかあさんにしかられたのが、くやしくて、かなしくて、いえで(家出)しようとけっしんしました。
なかよしのこいぬ(子犬)をつれて、もりの中でくらすことに、きめました。
ふかいもりの中で、小さい男の子とこいぬは、くらしていけるのでしょうか?
もりには、おそろしいもうじゅうが、すんでいるかもしれないのに。
みなさん、このおはなしをよんだら、きっと、アリョーシャとカライが、だいすきになるでしょう。
カライのようないぬが、きっと、ほしくなるでしょう。
さあ、おはなしが、はじまります。
 うちだ りさこ

「あとがき」には次のように書かれています。


このお話は、ソビエトの児童文学作家ウィリアム=フョードロヴィチ=コズロフの書いたものです。
家出などというと、なんだかたいへんなことにきこえます。けれども、おとうさんやおかあさんにしかられて、かなしい、くやしい気持ちいっぱいでうちをとびだしてしまい、庭のうえこみなどにいつまでもうごかずにいた、という思い出は、だれにもあるようにおもいます。このお話の主人公のアリョーシャのように、ふかい森の中へはいっていくとなると、たいしたぼうけんですが・・・・・。
さがしにきたおとうさんとであって男と男のはなしをつけ、うちへかえることになったときは、アリョーシャやカライといしょに、みなさんもほっとしたことでしょう。
この本の作者コズロフさんは、一九二九年にロシア共和国のボロゴエ市に生まれました。けれどもコズロフさんは、わたしのふるさとはクズネキノ村のほかにないといっています。そこはボロゴエ市にそうとおくない村で、湖と森のおおい美しい地方にあります。そのクズネキノ村にあったおじいさんとおばあさんの家で、コズロフさんは、まい年夏をすごしたのでした。
作者は日本の読者あてに、「はいいろオオカミやずるいキツネ、けむくじゃらのクマがすんでいる森は、わたしのなかのよいともだちになりました。おとなになったいまもその気持ちはかわりません。」と、てがみでいってきています。
そして、いまコズロフさんは、なつかしいクズネキノ村の森や人びとの物語を書いているということです。
森のそばのアリョーシャの家は、きっとこのクズネキノ村の家のことでしょう。そこで、作家も、カライのようなかわいい犬をかっていたのでしょう。
この小さなお話のすじだけをおうのではなく、さわやかな森のようすを心にうかべながらよんでいただけたらと、ねがっています。
 内田莉莎子

この絵本は昭和44年6月20日、株式会社偕成社から「どうわ新訳シリーズ」の一冊として発行されています。

●作者紹介


◎ 原作者・コズロフ
一九二九年、ソ連のボロゴエ生まれ。さまざまな職業を経た後、ジャーナリストとなる。三十才頃から作家活動をはじめ、「がちょうのユルカ」「古い粉ひき小屋で」等の作品がある。


◎ 訳者・内田莉莎子
一九二八年、東京生まれ。早稲田大学露文科卒。日本児童文学者協会会員。「きつねものがたり」「ミーチャとまほうの時計」「カーチャと子わに」等。ソビエト・東欧の児童書の訳書多数。


◎ 画家・佐藤忠良
一九一二年、宮城県に生まれ北海道で育つ。東京美術学校(現芸大)彫刻科卒。新制作協会会員。彫刻ばりでなく絵本・児童書の挿絵等、多方面で活躍。