「ふしぎひめ」ジャータカえほん
出版 財団法人 鈴木学術財団
え 渡辺三郎
ぶん 浜田広介
この絵本の裏表紙には次のように書いてあります。
ジャータカには「ふしぎひめ」(南伝大蔵経第380疑姫本生話)のように、やさしくかわいいお話もあります。
王子よ、お希(のぞ)みなさいませ。
希望はきっと幸(さち)をうみます。
たとえ遥かに遠いものでも。
希めばやがて充たされましょう。
王子よ、お希みなさいませ。
希望はきっと幸をうみます。
(同本生話偈文から)
ふしぎ姫の口をもれた美しい励ましの言葉に支えられて、頑張った王子は、とうとう姫をお妃(きさき)に迎えることができました。
花のような女の児を、花の精になぞらえて考えるのは、洋の東西を問いませんが、蓮の花から生まれたこの姫は、美しい言葉によって王子の勇気をよびおこす力を持った少女でした。
求めて、たゆまずに努力をすればきっと報われるという素朴な信頼は、インドに限らず昔から今に至るまでの、人間に共通な祈りです。
いろいろと難しい教えに発展はしていても、その源には、素朴なだけに根強いこうした願いが流れていることを知ることができます。
未来に期待する心、幸福を得ようと願う心をうたうこの物語は、ほのぼのとした明るさをもって読む者に伝わってくるように思われます。