野球と塁球 ②

野球と塁球-4
野球と塁球-4
野球と塁球-3
野球と塁球-3

野球と塁球 ②

 

壘毬戲 Base Ball

 

原本は『實驗詳説 遊戲唱歌大成』著者:白井規矩郎(明治33年4月1日 同文館発行)の213頁より228頁の「(10)壘毬戲 Base Ball」記載による。

 

壘毬戲 Base Ball

 

(甲)略式壘毬戲

此の遊戲は毬と毬枝とを以て行ふものにして極めて單簡愉快なる遊戲なり。
毬枝とは長さ二尺許の平滑なる圓き棒なり。
全員を等しく二分して兩組となし最初に毬を打つべき組は何れなりや。
抽籖などにて之を定め、その始めに當りたるものを内組となし、第五十二圖に示したるが如く五つの石か或は杭を以て互に間隔を六間乃至十間として(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の持塲を標示し、次に(ホ)を置き、其の周囲に輪を畫きて住處となし、別に設けたる外組の兒は其の内一人を除きて皆遊戲塲の周囲に散在し居り、除きたる一人は鬼となりて(ヘ)に立ち、其の所より毬を以て住處の中に立ちたる内組の一人に向かいて静かに投送し、別に外組の中より一人でて住處の後に立ち毬を鬼へ戻す務をなす。
扨て鬼より毬を投送するときは内組の一人其の杖を以て之れを打つ。
善く中りたれば直ちに立ちて(イ)の壘に進み、内組の次の一人代て杖を執り毬を投與せらるるを待つ。
而して最初の兒は尚ほ其の中途にて鬼か又は誰なり外組の者の爲に毬を撃ち付けらるる恐ささへなくば必ずしも(イ)に足を留むるに及ばず。
(ロ)(ハ)(ニ)の壘をも巡回し進んで尚ほ都合よくば住處にまでも走り達せんことを計るべし。
然れども若し何れの壘なり之れを離れて中途にて毬に打たるることあらば戯伴を脱せざるべからず。
尤も毬枝を打つとき之れを打ち損ずるか、又は之れを打つも其の毬誤りて住處の後に落ちるか、又は誰なり外組の者に毬を奪はるることあらば、是れ亦戯伴を脱するものとす。
然れば何れの壘になり走り入て足を留め居るものは、終始鬼の方に注目して鬼より毬を撃手の方へ投與するを見るときは直ちに走りて次の壘に移らざるべからず。
故に鬼は常に其の者を壘より誘出せんとて是れを欺し、若し走り出でたれば毬を打ち付けて戯伴を脱せしめんと工夫し、毬を以て撃手の方に投送せんとするの假作を爲す。
内組のもの既に殘らず壘を巡回し終わりて住處に達するときは全組何れも戯伴を脱し唯一人のみ後に殘るときは其の者は「壘巡回當點二個」の勝ちとなるなり。
或いは既に二人のみとなりたるときは其の一人は殘りの一人に譲りて自ら身を退け、殘りの一人獨り之れを受け持つ。
(則ち巡回)も差し支えなし。
偖、其の後に殘りたる兒は自ら住處に立ち、鬼より毬を投與せらるるを待つ。
而して其の投法の己れの氣に適せざるときは之れを打らざる間は幾回にても其の望みに任せて鬼より之れに毬を投與せざるべからず。
又之れを打つと雖も最初一回は我が思ふ如く十分の遠きに達せざるときは住處を走り出るに及ばず。
然れども二回目に到りては最早少しも遅怠せずして毬を打ちて中りたれば必ず敵の毬の爲に撃れぬ様、且つ其の毬の未だ住處へ投送せられざる間に走り進みて總ての壘を巡回せざるべからず。
併して能く之れを成効せしときは其の味方の組は續て内組となりて再び遊戲を始めることを得べし。
若し成効せざるときは敵方の組、之れに代て内組となるべし。
二回目に毬を打ち損したるときは内組を敵に譲ること勿論なりとす。
又、何時にても味方の組の人數大に減じ何れも處々の壘に散在して住處に一人も止りて毬を打つべきものなきときは鬼にても誰にても敵方の一人住處に走り入り、而して毬を住處の内に投送して、今までの内組は外組となり、鬼方の組は内組となり代るなり。
然れども鬼が住處へ毬を投送し損じて其の間に何れの壘に居るものにても正しく住處に歸り來るときは尚ほ内組となりて前の如く遊戲を繼續すべきものとす。

 

(乙)普通壘毬戯

此の遊戲は米國の國技として有名なるものとす。
其の活潑にして壯快なるは此の技に精熟したるものは決して他の毬技を爲さざるを見ても明かなることなりとす。
・遊戲塲 平地にして芝原なるを要し、且つ成るべく樹木建物等なき塲所を撰び、其の内に次に示すが如き遊戲を石灰等を以て正確に區劃すべし。
・投毬所 は長五尺五寸許の板を置きたるものにして、打毬所は長六尺幅四尺の劃線を以て限界し、兩所の間隔は幅八尺程芝草を除棄し硬土にて通路を作るべし。
又た各壘間の線内なる幅三尺の道及び各壘の周圍も硬土を以てすべし。
・競技法 此の遊戲を行ふには各組九人の人員を要す。
兩組にて通計十八人とす。
先づ初め合議の上一組の九人各々遊戲塲既定の位置に就き是れを防禦軍とし、然して一方の組の九人は攻撃軍となり右の九人向て挑戰するものとす。
攻撃軍の一人即ち打手は本壘に兩足を置き棒を以て投手と云ひて防禦軍の一人にして毬を投する者に面して立ち、其の投毬を受け打つなり。
打手は成るへく毬を防禦軍の各戯者に達し得ざる處に打ち投じ、直ちに走者となりて最初第一壘に向て走る。
此の時敵の第一壘將自ら毬を受け、若くは其の味方より投する制を受け、走者の身体に触れしむれば走者は客員となり戯伴を脱す。
若し都合よく客員とならずして第一塁に達し得て、猶ほ餘裕あらば第二塁第三塁と順次に走り得る的走らざるべからず。
若し第一塁か第二塁に止まり夫より以上に達し得ずば其の塁にて待ち次回の打手が毬を打ちし時これと同時にまた走りて其の次の塁にと志し、次回打手も又最初の打手と同一の方法にて走者となりて走る。
其より三回四回と順次打手となり其の攻撃軍が三人まで客員を出すに至らば茲に兩軍其の位置を交換し今まで攻撃軍となりし者は防禦軍となり、防禦者なりしものは攻撃軍となる。斯の如く三人が客員となる毎に相交替して九回繼續したる後彼の走者が無事に本塁に達し得たる點數の多きものを勝となす。
猶ほ此等の優劣を分明ならしむる爲め他に審判者及び書記を要す。

 

 遊戲者の務め及び心得
・投手 投毬するときは毬を左手より右手に移し、一足は必ず板上に置き、一足蹈出して投與すべし。
板の後には一足も出すことを得ず。
又塁に向て投毬せんとするときは其の一定位置に立ち鳥渡猶豫して投すべし。
 但し毬を投せし後は定位置より出るとも可なり。又打手に毬を投せんとして僞はるが如き行爲をなすべからず。若し投手が此れ等の規則を犯して投せし毬は不正毬と云ひ審判者は打手及び走者に一塁を與ふべし。
投手は又た取手と相應して一致の運動を取り、打手または走者をして乘ずへき間隙を與へざる様相助け働くべし。
・取手 戯塲の本壘より二歩余後に位置を占め投手が打手に投せし毬を其の打手が打たさりしか若くは打ち損したる毬を受け取りて之れを投手に還附し或は敵若し自己の壘より離れ居るか次の壘を襲はんとせし時は敵の向ふ處に投毬し敵を撃つべき務を有す。
又敵若し本壘に向て走り來るときは其の壘を守るべき務めをも有す。
・第一壘將 第一壘に位置を占むべきものにして敵が自己の壘に達せざる前に味方より投する毬を受け又は毬を敵の体に觸れしむるものなり。
 毬を受け止むる時の心得 毬を受け止むる時は我が身体の一部を壘に觸れつつ取るべし。若し壘に觸れ居らずして受け取りたる毬なれば直に自己の壘を蹈むべし。傍觀者か偶然毬を受け止めし時は直に投手に投すべし。以上の規定に依らずして取りし毬は無効となり且つ敵に一壘を得らるるものとす。
・第二壘將 第二壘に位置を占むべき者にして敵が第一壘より自己の壘に向ひて走り來る時は走者に其の毬を觸れて敵を殺すのみならず遊戲者全体を監督するの務を有す。敵若し自己の壘に在らざる時は數歩前に出でて近邊に來る毬は悉く受け止むることを勉め、又取手よりの投毬を受け、或は其の他毬を取りし時敵若し壘に觸れ居らざる時は毬を敵の身体に投殺すべし。
 毬を受け止むる時の心得は第一壘將の處に記したると同一なり。
・第三壘將 第三壘に位置を占むるものにして第一第二壘は若し失敗すとも一箇の壘を敵に占めらるるまでの損失なれど此の壘に到りては敵の走者を逸する時は一點の勝利を得せしむるものなれば前二者に比すれば其の任重し。殊に敵の打手は此の方向に向けて毬を打つ故、此の壘將は第一壘に向ひて精確に投毬し得ざるべからず。
 毬を受け止むる時の心得は第一壘將の處に記したると同一なり。
・遊撃手 第二壘と第三壘との中間に位置を占むるものにして自己の守れる塲所に飛來する毬を取り且つ壘將を補助する務を有す。
或壘將が敵の投せし毬を取らんが爲めに自己の壘を出ることあり。
然るときは其の跡に位置を占めなどし、又壘將が取り損したる毬、或は味方が投し過ぎし毬には必ず其の方向に從ひて走り攫み之れを投手に送らざるべからず。
・右翼 第一二壘の後の位置を占むるものにして外營右方を守り且つ各壘將を援助する務めを有す。
或塲合により味方のものより第一壘將に向ひて投毬することあり。
斯る時は直に第一壘將の後に走り彼か受くる能はざる毬を取り直に味方の適當なるものに投與すべきものとす。
・左翼 遊撃手の後方に位置を占むるものにして營外の左方を守り第三壘將或は遊撃手等に毬の來るときは其の後に立ち援助すべし。
・審判者 取手或は投手の後に居るものにして其の任務は競技上の諸規定を誠實に行はしめ双方に爭論の起りしときは公平なる判決を下すべきものとす。
・書記 競技の模様を記載し其の結果を報告し又打手を順次に呼び出す務めを有す。
・打手 所謂攻撃軍にして其の任務は投手より投する毬の性質及び癖等を觀破し成るべく遠距離に毬を跳ばし其の機に乘して第一壘を奪ふべし。
味方若し第一壘にある時は第二壘の方向に打つべからず。
味方第二壘に在るときは第三壘の方向に打つべからず。
畢竟味方をして充分に運動を爲し得る様反對の方向へ毬を跳ばすことを務むべし。

 

 諸通則
 (一)打手が走者となる時の塲合
(一、)我が打ちたる毬のファウル旗線内に落ちたる後ち。
(二、)投手より投する毬の本壘の上を通過し行くこと四回に及ぶとき。
(三、)三度投手が正當に投じたる毬を我が打たざる時。若くは打ち損じたるに取手が其の毬を受け得ざりしとき。
(四、)投手の投せし毬が己れ或は審判者の身体に觸れ、又は我が棒に偶然當りたりし時。
(五、)投手が定めの位置外に在りて投毬したるとき。
 (二)打手及び走者が客員となる時の塲合
(一、)取手が三度投手が正當に投じたる毬を打たざるとき、若くは打ち損じたる時の毬を取らんとする際打手之を妨けたる時。
(二、)打手が打ちたる毬ファウル線外に落ちんとする前、敵に取られし時。
(三、)第一の塲合に於て三回とも毬を取手に受けられしとき。
(四、)打手は毬を打つ意なくして故意に毬を打棒に當しとき。
(五、)第一及び第二の動作をなして第一壘に走る際、敵が其の毬を取り打手が第一壘に達せざる前に第一壘將が其の毬を取りし時。
 以上は總て打手のみに限る
(六、)敵の投せし毬を走者が妨げしとき。
(七、)壘間のフォル旗線を走者が半間以上離れて走りたるとき。
(八、)走者壘に觸れ居らざる間に敵に毬を着けられし時。
(九、)既に壘間に走者ありて打手が毬を打ち、敵がそれを地上に墜落せざる前に取りたるとき。
(十、)壘には同時一人以上の走者あるべからず。此塲合に後に來りたるもの。
(十一、)走者が前の壘を蹈み居らざる塲合に其の壘將に投毬し走者が壘に着かざる前に受取りたるとき。

 

 遊戲用器具
・毬 重量及ひ大小双方協議の上、適宜なるを用ゐ得べしと雖も通常其の重量三十五匁、周圍七寸五分許のものを用ふ。
・打棒 徑二寸五分許、長三尺五寸を度とし堅木にて造り、握部は軟質の木材なるを最良とす。
・面 取手の冠ふるものにして一個にて足れり。
・手袋 投手用遊撃手用の二種あり。
・ミット 各自隨意の物を使用し得べしと雖も取手を除くの他は各其の掌の周圍一尺一寸以上のものを用ふることを得ず。
・壘標 ズックにて中に砂粒等を入れて造り、總て四個を要す。其の内第一二三壘に用ふるものは方一尺二寸五分、本壘に用ふるものは方一尺とす。

 

  (以上)