ぎんいろの巣・佐藤忠良・絵

ぎんいろの巣・佐藤忠良・絵
ぎんいろの巣・佐藤忠良・絵

 

ぎんいろの巣・佐藤忠良:絵

 

 椋 鳩十・作

 佐藤忠良・絵

 カラー版・創作えばなし11

 1973年5月30日  ポプラ社 発行

 

ぎんいろの巣

この絵本はとても美しい絵本である。

佐藤忠良が描いているので当然といえば当然なのだが。

物語は「椋 鳩十(むく はとじゅう)」の「三光鳥・さんこうちょう」のお話。

 

椋鳩十は父から以前、「三光鳥」の話を聞いたことがあったが、野山を散策していてもこの三光鳥に出合ったことが無かった。

或る時、クヌギの木に今まで見たことない銀色に光っている鳥の巣を見つけた。

蜘蛛の糸で巻き付けて銀色に光っている巣を作る鳥はどんな鳥なんだろう。

突然大きな鳴き声がして、その巣の鳥が帰ってきた。

頭のてっぺんに濃い瑠璃色の羽根を立てている。

頭から背中にかけても濃い瑠璃色をしている。

瑠璃色の尾羽がとても長い。

色が美しいばかりでなく、姿も美しい鳥であった。

この鳥が父から聞いた「三光鳥」だと解った。

鳴き声は「ツキ、ヒ、ホシ」と鳴く。

「月、日、星」と聞こえるので「三光鳥」と呼ぶのだそうだ。

ぎんいろの巣・佐藤忠良・絵
ぎんいろの巣・佐藤忠良・絵

椋鳩十は「おわりに」として次のように書いている。

 

「わたしは、一年の半分を、野に住むものたちのあとを、おっかけまわしています。

このものたちに、近づけば、近づいていくほど、かれらの生活に、驚きを感じるのです。

自然のふしぎさ、かぎりない奥深さにうたれるのです。

宇宙を、ひっくるめて、『自然とは何か』という問題にぶつかって、ふたたび、自然の深さをしみじみと感じるのです。

そしてまた、この自然を、平気でこわしていく今の人間たちのいとなみを見て、『現代人とは何か』と、考えてみたりするのです。

『ぎんいろの巣』の物語は、こんな心をもっているわたしと、三光鳥との、であいから生まれたものなのです。」

 

【椋 鳩十】(むく はとじゅう)(1905―1987)

児童文学作家。本名久保田彦穂(ひこほ)。1905年、長野県に生まれる。法政大学卒業。鹿児島女子短期大学教授。「母と子の20分間読書運動」を提唱、また少年少女の為に数多くの動物文学を発表し、文部大臣奨励賞、サンケイ児童出版賞、赤い鳥文学賞等を受賞。「椋鳩十の本」全25巻(1982・理論社)がある。

 

【三光鳥】さんこうちょう

スズメ目カササギヒタキ科の小鳥。スズメ大だが,雄の尾羽が著しく長く30センチメートルを超える。頭は黒色,背は赤紫色で腹は白く,目の周りに水色の縁取りがある。日本では夏鳥として本州以南の暗い林で繁殖し,冬は東南アジアに渡る。鳴き声が「ツキヒホシ(月日星)」と聞きなしたことから,この名がある。 (スーパー大辞林3.0 (C) Sanseido Co.,Ltd. 2010)