さんびきのくま・佐藤忠良 絵

さんびきのくま・佐藤忠良 絵
さんびきのくま・佐藤忠良 絵

 

さんびきのくま・佐藤忠良 絵

 

 文:神沢利子

 絵:佐藤忠良

 おはなしの本・第6巻-2 こどものための3冊の本〈全20巻 〉

 昭和47年(1972)2月21日 世界文化社 発行

 

この絵本の扉の裏には次のようにある。

お母さまに

さんびきのくまはロシアの文豪トルストイが、小さな子どものために再話したロシア民話にひとつです。

森の中で迷子になった女の子の不安、一軒家を見つけたときの安堵、家の中へ一歩踏み入れるや、だんだんに大胆に、好奇心に満ちていく過程・・・・・・・、よく子どもの姿を捉えているとお思いになりませんか。

民話に不可欠な繰り返しの楽しさとともに、くまの家族それぞれの、くまらしさと人間くさい生活ぶりとの混交を、小さい人に面白いと感じていただきたいと願います。」

 

この「さんびきのくま」は 

「女の子が森で道に迷ってしまう。森の中で一軒の家を見つけた。その家の部屋にはスープが三皿盛りつけてあった。ちょうどいい大きさのお椀とお匙でスープを飲み、椅子を壊してしまい、ベッドに入って寝てしまう。間もなく、その家のお父さん・お母さん・子供の熊の親子が帰ってくる。熊の親子は留守中に誰かがスープを飲み、椅子を壊し、ベッドで寝ていることに気づく。すると女の子は飛び起き、あわてて逃げ出して行った。」

というお話。

(この絵本ではスープを選ぶのにお椀とお匙の大きさで選んでいるが、スープの温かさで選ぶ話もある。)

 

この「さんびきのくま」の話は、ロシア民話ではなく、イギリスの童話でヨーロッパに広がっていた話をトルストイがロシア語に翻案したらしい。

 

翻案】ほんあん

小説・戯曲などの,原作を生かし,大筋は変えずに改作すること。「ハムレットを江戸時代の話に―する」「―小説」。

事実を仮構すること。「証拠のあるものを―することは出来まいから/雪中梅(鉄腸)」。 (スーパー大辞林3.0 (C) Sanseido Co.,Ltd. 2010)

 

イギリスの童話は「ゴルディロックス(Goldilocks、金髪の女の子)」、或いは「ゴルディロックスと3匹のくま Goldilocks and the Three Bears 」と云う。

 

ある日三匹の熊は朝お粥を作ると、三つのお皿に分けて少し冷めるまで、森に散歩に出かけました。

丁度その時、金髪の女の子が三匹の熊の家の前を通りかかります。

よその家に黙って入ってはいけないのですが、女の子は家の中を覗いて誰も居ないことを知ると、その三匹の熊の家に入ってしまいます。

その家のテーブルの上にはお粥(シチュー、あるいはスープ)の入ったお皿が三つありました。

大きなお皿のお粥はまだ熱くて飲めません。

中くらいのお皿のお粥は冷たく冷めている。

小さな皿のお粥は温かさがちょうど良く、お腹のすいていた女の子は全部食べてしまいました。

お腹が一杯になった女の子は、すこし休もうと、そばの椅子に座ろうとします。

大きな椅子は石で坐りずらく、中ぐらいの椅子は丸太で固く、小さな椅子は丁度良かったのですが、その椅子で遊んでいるうちに壊してしまいます。

金髪の女の子は疲れて寝ようとしたが、大きなベッド、中くらいのベッド、小さなベッドの三つがあり、その中の小さなベッドに入りこんで寝てしまいます。

三匹の熊は散歩から帰ってきて、家に誰かが居ることに気付きます。

温かいお粥を食べられ、椅子を壊され、ベッドまで占領された熊は怒ってしまいます。

そんな悪さをした女の子は慌てて起きて、逃げて行きます。

 

この「さんびきのくま」の話には色々なパターンがあるようで、お粥がシチューやスープだったり、その熱さの表現に違いがあり、また椅子の大中小の表現の仕方やベッドの大きさの表現の仕方など、本によって違いがあるが、女の子が自分に合った丁度良いものを選ぶことには違いはない。

欧州では子供を寝かせつける時、お母さんが読んであげる絵本の一つでもあるらしい。

 

尚、ゴルディロックス経済 Goldilocks economy とは熱すぎでも冷たすぎでもない丁度良い景気を指す。

これはこの物語からきた言葉である。