おむすびころりん・佐藤忠良 画
「おむすびころりん」
作・松谷みよ子
画・佐藤忠良
名作せかいのおはなし(5歳から9歳)
昭和40年(1965)11月16日第一刷発行 株式会社 講談社
この本の「解説」には次のようにある。
■解説
おかあさんがたへ 松谷みよ子
ここに集めたのは、日本の昔話です。しかし、お母さんがたがお読みになって、ああ、これならよく知っている、とお考えになるのもあるでしょうし、へえ、日本の昔話にこんなものもあったのかとお思いになるのもあると思います。
たとえば、「ちょうふく山のやまんば」です。これは今から数年前に、秋田県仙北郡というところで採集されました。語ったおじいさんは堀井徳五郎さん、採集した方は今村泰子さんという主婦で、その後、これらの昔話を集め、ご主人の今村義孝氏(秋田大学教授)と一冊の本にされました。(中略)
日本の子供たちが、日本の話を知らないことくらい、悲しいことはありません。どうか、昔話を、夜寝るとき、一つずつでも読んであげてください。それが子供たちの心を、どれほど豊かにするか、はかりしれないと思います。
「うりこひめとあまのじゃく」
ほとんど全国に伝わっている、桃太郎の兄弟のような話です。川上から流れてくる、瓜や桃から生まれた子は、神の授かり子を意味しています。語り口の楽しさを生かして読んであげてください。
「かさじぞう」
昔は年の暮れ、つまり大晦日の夜には、神様たちが村々を歩き回り、幸せを授けたらしく、「大みそかの客」と呼ばれる話が色々の形で伝わっています。
「おむすびころりん」
いい爺さまと悪い爺さまが、地の中の国を尋ねる話です。地の中の国には、このほか兎が住んでいたり、地藏や鬼が住んでいて、いずれもいい爺さまは宝をもらい、悪い爺さまは懲らしめられるのが特色です。
「ちょうふく山のやまんば」
山姥(やまんば)の話にも、怖い山姥、いい山姥、色々ですが、これはいかにも闊達な山姥で、あかざばんばにしろ、ねぎそべたちにしろ、みんな生き生きとした性格を持つ人物が登場します。日本の、すぐれた民話の一つだと思います。
「やまなしとり」
三人兄弟の末っ子が、みごと怪物を退治してお母さんの病気を治す話です。外国でも末っ子が手柄をたてる話が多いのですが、面白いことです。
「つるのおよめさん」
あの有名な「夕鶴」のもとの話がこの「つるのおよめさん」です。貧しい若者のところに、人間以外の者が人間の姿となって嫁に来る話はたいそう多く、鶯、白鳥、魚、蛤、狐、蛇とそれは沢山あります。天人女房の話もあります。昔、嫁も迎えることが出来なかった貧しい若者たちの願いが、このような話を生み出したのでしょうか、美しい話です。
「くらげほねなし」
なぜなぜ話の一つです。海の水はなぜ辛いとか、猿の顔の赤い訳とか、昔話にはなぜなぜ話が沢山あります。
「だいくとおにろく」
これも日本ではただ一つ、岩手で採集されましたが、外国には似た話がいくつもあります。この話を子供に聞かせたところ、頭にテレビ塔が立ち、胸に目玉入れのポケットをつけた愉快な鬼を絵に描きました。概念にとらわれず、子供は鬼を創造します。話して聞かせることの大切さは、こんなところにも出てくるのです。
(尚、ひらかな表記を漢字に直した箇所があります。)