三浦綾子記念文学館(二)
三浦綾子の代表作「氷点」の書き出しは
「 敵
風は全くない。東の空に入道雲が、高く陽に輝やいて、つくりつけたように動かない。
ストローブ松の林の影が、くっきりと地に濃く短かかった。その影が生あるもののように、くろぐろと不気味に息づいて見える。
旭川市郊外、神楽町のこの松林のすぐ傍らに、和、洋館から成る辻口病院長邸が、ひっそりと建っていた。近所には、かぞえるほどの家もない。
遠くで祭りの五段雷が鳴った。昭和二十一年七月二十一日、夏祭りのひる下りである。」
さらに「氷点」には
「この見本林というのは、旭川営林局管轄の国有林である。
北海道最古の外国種針葉樹を主とした人工林で、総面積十八.四二ヘクタールほどある。樹種はバンクシャ松、ドイツトーヒ、欧州赤松など十五、六種類もあり、その種類別の林が連なって大きな林となっている。
見本林には管理人の古い家と、赤い屋根のサイロと牛舎が建っていた。」
とも書かれている。
この「管理人の古い家と、赤い屋根のサイロと牛舎が建っていた」場所あたりに、今の三浦綾子記念文学館が建っているという。
(東延江著「旭川 街並み今・昔」100頁参照)
確かには三浦綾子記念文学館は、このストローブ松林などがある「見本林」に隣接して建てられていてる。
この「見本林」の林の中に埋もれるように建っている、その建物は多面体で二階建てである。
文学館入口の受付で拝観料500円を払い、真っ直ぐに進むと大きな「三浦綾子夫妻」の写真が掛けてある。
以前は無かったが、今はその前にグランドピアノが置いてある。
一階の第一展示室には故三浦綾子の著作が展示され、第二展示室には三浦綾子の生涯とその資料が展示され、さらに第三展示室には三浦文学の代表作などが展示されている。
その脇に喫茶室があり、コーヒーなどが飲める。
二階は第四展示室で企画展などがあり、第五展示室には三浦夫妻の執筆風景や取材旅行など日常生活の資料が展示されている。
ここにはテーブルと椅子が用意されていて、三浦綾子の著作を自由に読むことが出来る。
佐藤忠良作「三浦綾子像」2001は第二展示室にある。
一階受付の横には三浦綾子の書物やその関連した本と、「氷点」「塩狩峠」などのお土産用お菓子なども販売されている。