西條八十 「抒情詩と随筆・わが詩わが夢」

西條八十「抒情詩と随筆・わが詩わが夢」
西條八十「抒情詩と随筆・わが詩わが夢」

抒情詩と随筆

「わが詩わが夢」 西條八十

 

西條八十は「あの夢この歌-唄の自叙傳-」を出版する前年、「抒情詩と随筆 わが詩わが夢」と題する本を出している。

昭和二十二年七月に草原書房より出版された。

本で題名の通り、詩と随筆で構成されている。

ここにその、「目次」と「あとがき」を載せる。

 

尚、この本の装幀をした「三浦勝治」はシルクロードなどをよく描く洋画家で、岐阜県関市に「三浦勝治美術館」がある。

 

目次

詩篇

春寒

 言葉 ある夜の月に 春寒 夕 砂山 小鳥籠 紅姫蔦 虹 窓 水車 薄玻璃 をさな戀 たばこ 逝く人多くして 定九郎 むかしの仲間

哀唱

 ねむれる母 鶯の墓 初戀 ひばり 春の夜にうたへる 水車 雲 七夕 水に寄す 哀歡 秋燕 君死にたまふことなかれ 美しい獨樂 別後 哀唱 佐渡を眺めて

随筆篇

 懐かしき母

 黑い大きな瞳

 船旅と人生

 笛の音

 美しき家族

 名古屋の乙女

 早すぎた失戀

 なつかしき古都寧樂を想ふ

 チエスターフィールド

 爐邊回想

 下舘の記

  一、二羽の鴨

  二、東京往復

  三、校歌と理髪師

  四、さくら肉

  五、雲雀鳴くころ

  六、チイ公

あとがき

 装幀 三浦勝治

 

「あとがき」

「春寒」には茨城の疎開地で書いたをりをりの抒情詩ををさめた。「逝く人多くして」や「定九郎」のやうな切實な實感を詠つた作品もあるが、おほかたは若い日の追憶風な小品である。

「哀唱」には、これまで書いた抒情詩のなかから、特に再誦してもらひたいと思うふやうな作品を自選した。「哀唱」といふ題は門田穰君が附けてくれた。いまは絶版になつてゐる眞紅の繻子の表紙の、これと同じ題だつた古い詩集を、門田君は、わたしと同様、きつと懐しいんでゐてくれたのであらう。随筆の「下舘の記」や「爐邊回想」や「チエスターフィールド」などは、最近雑誌「蠟人形」載せたごく新しいものである。讀者はこれらによつてわたしの身邊近事を知つてくれるであらう。他の部分はやはり門田君が編纂してくれた。若い日に書いたもので、いま讀むと作者自身面はゆいやうな感じがしないでもない。

とにかく、これらの抒情詩や随筆が、今の混沌たる世相の中で、すこしでも讀者の心(を)潤ほし慰めることが出来たらうれしいと思ふ。

 昭和二十二年初夏   著者

 

昭和二十二年七月十五日 初版發行

 著者  西條八十

 發行所 草原書房